Symphony V
「唯ちゃん!大丈夫かい!?」

「へ?」

「なにすんだよ!ばばぁ!」

「ばばぁって言うんじゃない!あんたって子は…唯ちゃんに一体何したんだい!」

2人が突然言い合いを始める。最初、そのすごさに圧倒されるも、ハッと我に返り、2人を止めに入った。

「お、おばちゃん!違うの!」

「唯ちゃん、こんな馬鹿息子、庇わなくってもいいんだよ!?」

「あぁ!?んだと!?」

「ちが…そうじゃなくって!巧くんは、助けてくれたんです!」

唯の言葉に、おばちゃんの動きが止まった。

「助けた…?」

唯は聞かれて頷いた。

「私、昨日ちょっと色々あって。そのとき、たまたま巧くんに会ったんですけど、一緒に居てくれて、私のこと、助けてくれたんです」

疑いの眼差しを巧に向けるおばちゃんに、巧はかぁっと顔を赤くした。

「な、…んだよ!その目は!」

信じられないといった表情で、唯を見るおばちゃんに、唯はこくんと頷いた。

「本当に、何もされてないかい?」

おばちゃんに心配そうに聞かれて、唯は苦笑しながら頷いた。

「うん、大丈夫。本当に、なんにもなかったですから」

「ったくよ。ちょっとは息子を信じろよ」

ため息混じりに呟く巧に、おばちゃんは苦笑いを浮かべてごめんね、と謝っていた。

「まぁ気を取り直して。朝ごはんたくさんあるから、唯ちゃんも一緒に食べちゃいな」
唯は慌てて首を横にふった。

「そんな!とんでもないです!」

おばちゃんはふふっと笑っていいからいいから、と唯の手を引っ張っていった。
< 138 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop