Symphony V
『ふーん…』

険悪なムードの車内。レオンの運転する車に2人は乗せられていた。

レオンと巧、それぞれを紹介したとき、巧がうん?と何かを思い出すように首を傾げた。

「あぁ!思い出した!」

次の瞬間、はっとした顔でレオンを見た。

「レオン・スミス!そうだろ!」

巧が言うと、レオンはちっと舌打ちをした。

「なぁ、唯!お前すげーな!」

何のことかさっぱりわからず、唯が不思議そうな顔をしていると、少し興奮気味に巧が続けた。

「レオン・スミスって言ったら、今アメリカで一番の売れっ子モデルだぜ!」

「…は?」

思わず眉が寄る。

「誰のこと言ってるの?」

「誰って…だから、こいつのことだって」

巧が言うと、唯は怪訝そうな顔でレオンを見た。

「…あぁ、そうだよ。俺の本職はモデルだよ。昔親父の仕事についてった時に、ジャケットのモデルやったのがきっかけで、今もずっと仕事してる」

「うっそ…まじで?」

驚く唯に、レオンはため息をついた。

「まぁ、大人になったら誰でも、生きていくために働かなきゃなんねーからな。だから俺は今の仕事を続けてる。それだけだ。別に特別なことでも何でもねー」

そういうレオンに、唯ははぁ、と少し呆けた顔で頷いた。

「…ほら、着いたぞ」

着いた場所は、レオンが滞在しているホテルだった。
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