Symphony V
「話は村儀から聞いたよ」

すっとグラスに水を注いで唯に差し出してくる。唯はどうも、とそれを受け取った。

「すいません、ご迷惑をおかけしてしまって」

申し訳なさそうに唯が謝ると、キアリーは笑いながら首を横にふった。

「持ちつ持たれつってやつだよ。お互い、協力しあわないとね」

「…どういう…意味ですか?」

キアリーの言葉の意味が、よく、わからなかった。

「え?あ、いや…」

しまった、という顔で口をもごもごとさせるキアリーに、唯は眉を顰める。

「協力って、どういうことなんですか?」

唯に詰められ、キアリーは両手をあげて、わかったよ、と観念した風に手をひらひらと動かした。

「まぁ…君になら話してもいいかな」

コップの水を一口飲むと、キアリーはすぅっと深呼吸をひとつして話しはじめた。

「キアリーって名前で、音楽活動をしているのは知ってるね?」

唯は聞かれて頷いた。

「実は、ミュージシャンってのは副業なんだよ」

「え?」

「本職はこっち」

そう言うと、キアリーは小さなバッジを取り出して見せた。

「え…えぇぇ!?」

目の前に見せられた手帳、というよりは薄い身分証のようなものには、キアリーの顔写真と、金色に輝くバッジ、そして、英語でいろいろ書かれた文字と、ひときわ目を引く、大きく書かれたFBIという記載があった。
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