Symphony V
絶句する唯。空いた口がふさがらない。

「このことは誰にも言わないでくれよ?FBIが国外で活動してるってことがばれたらマズイんだ」

「え?そうなんですか?」

「あぁ。もちろん違法行為だ。だから俺は、FBI捜査官としてではなく、いちミュージシャンとして海外を飛び回ってるんだ」

「あ…だから変なとこで急にライブしたりしてるんだ」

キアリーのライブが田舎で急に行われたりする理由がやっとわかった。

「それぞれの国の警察官に、友人がいるからな」

笑うキアリーに、唯は、ははっと乾いた笑いを浮かべた。

「さて、ここからが本題だ」

キアリーがまじめな顔になる。唯も思わずピシッと背筋を伸ばした。

「村儀は知っているだろう?あいつ、昔はFBIにいてね、その時一緒にコンビを組んでたんだ」

「へぇ…」

「…村儀が紅い蜘蛛を追っているのは知っているよな?」

「はい」

「紅い蜘蛛に殺されたとされる最初の被害者が、村儀の友人だったんだ。以来、あいつはずっと、紅い蜘蛛を追っている。あいつは、被害者の殺人を頼んだ相手を探し出すといって、FBIを辞めていった」

村儀にそんな過去があったとは知らなかった。唯はじっと、キアリーの話を聞いた。

「俺はそのころ、オルトスを追っていた」

「え?オルトスって…あの怪盗の?」

唯に聞かれて、キアリーは頷いた。

「あいつらは単なる愉快犯だ。だが、このまま馬鹿にされっぱなしじゃFBIの沽券に関わるからな。こっちの情報を渡す代わりに、村儀の持っている情報をこっちに流してもらってたんだ」

キアリーの言葉に、唯はごくりとつばを飲み込んだ。
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