Symphony V
そうだ。
私はあの時、稜夜先輩に会ってたんだ。

つぅっと一筋の涙が頬を伝った。目が覚めると、心配そうに顔を覗き込む人影が見えた。

「唯!大丈夫か!?」

今にも泣き出しそうな顔でレオンが唯の顔を撫でた。

「どうした、辛い夢でも見たのか?」

「……夢…」

事件が発生してから、少しずつ思い出される昔の記憶。
一つ一つのかけらが重なり、つながって、大きな絵を描いていく。

「私、稜夜先輩に昔、会ったことがあった」

小さなころ、無邪気な少年と少女が交わした約束。
稜夜がまだ覚えていたかは、今となっては知るすべはない。
だが、覚えていたのだとすれば、稜夜の優しさの意味が、少しわかった気がした。

胸の奥が、チリッと痛んだ。
思わず足を抱えて座り、顔をうずめた。


唯ちゃんにこれ、あげる。

これ、なぁに?

誰にも内緒だよ?これはね――――


唯ははっと顔を上げた。

「ボイスレコーダー!」

急にどうしたのかとびっくりする3人。
唯は慌てて、体を起こして、部屋を飛び出していった。
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