Symphony V
ホテルを出たところで、唯はポケットに入っていった携帯を取り出し、村儀に電話をした。

『はい、村儀』

「村儀さん!ボイスレコーダー!」

『あ?』

意味がわからないといったふうな村儀に、唯は構わず続けた。

「思い出したんです。昔、先輩から、ボイスレコーダーを貰ったんです」

『ちょっと待て』

電話越しに、何かをパラパラとめくる音がした。

『…そんなもの、現場になかったぞ?』

「クマのぬいぐるみは?」

『ぬいぐるみ?…あぁ、まて。それなら押収はしてないが、現場にあったようだ』

村儀が言うと、唯はごくりと喉を鳴らした。

「私、今から家に戻ります!」

『おい、東峰。それが一体』

村儀が言い終わるのも聞かず、唯は携帯をブチッと切った。
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