Symphony V
唯は探すふりをしながら、2人を見た。


さっき感じた、巧くんへの違和感。


ふっと手が止まる。


なんだろ、一体。


と、棚の上に置かれてある、ピンク色の小さな四角い形をした棒のようなものが目についた。


これ、お父さんがパチンコ行った時に換え忘れたやつ。


手に取り、じっと見つめる。


何て言ったっけ、確か…



『アトマイザー』




父親の言葉を思い出した。

『お金に換えることもできるが、これをこのまま使うこともできるんだ。香水を入れて、こうやって……』



そして、ハッと気がついた。

巧の方を見る。


…いない!?


そんなバカな、と、キョロキョロと辺りを見回す。


「どうした?唯」

「わあぁ!」

驚いて振り向くと、そこにはレオンがいた。

「び…びっくりした」

胸を撫で下ろした瞬間だった。

「危ない!」

レオンの後ろから、誰かが何かを降り下ろそうとするのが見えた。

唯は咄嗟に、レオンを突き飛ばした。
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