Symphony V
ズキンと痛みが走る。
うっすらと目を開けると、さっきまでいた自分の家ではないことだけわかった。じめっとして、かび臭い空気の漂う薄暗い場所。

「ったー…」

体を起こしながら、痛む額を触ると、ぬるっとした感触がした。
体がぶるっと震える。


血の、感触。


思い出すあの感触に、唯は気を失いそうになった。

「ここ、どこ…?」

ふるふると頭をふり、あたりを見回した。
少しずつ暗闇に目が慣れていく。
ふっと後ろに、人の気配を感じる。

「誰!?」

バッと後ろを振り向くと、人がいた。

「ぎゃ!って……え?鏡?」

よく見てみると目の前にいる人物は鏡に写った自分の姿だった。
ぺたぺたと触ってみる。ひんやりと冷たく硬い感触。

「なんで、こんなとこに」


確か、家で探し物をしてて、それから―――


「レオン!」

はっと思い出し、名前を叫んだ。


そうだ、誰かがレオンに後ろから襲い掛かろうとしてて、それで。


そっと自分の額をもう一度触った。
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