Symphony V
「ご、ごめっ!」

レオンは頭をさすりながら、体を起こした。

「ここ、どこ?」

きょろきょろとあたりを見回すレオン。
唯もすぐにはっとして、周りを見た。


―――――いない。



レオンのそばにいた人物の姿がなくなっていた。

「大丈夫?どこも怪我してない?」

唯が聞くと、レオンは大丈夫、と頷いた。

「それより、唯の方が怪我してるじゃねーか!」

レオンは唯の顔をぐいっと両手で持つと、じっと額の方を見た。

「いや、その…これはまぁ、大丈夫だし」

ははっと笑う唯に、レオンは顔をしかめた。

「これのどこが大丈夫なんだよ!女の子が顔に傷なんてつけるなよ!」

あはは、と乾いた笑いを浮かべる唯に、レオンは呆れたようにため息をついた。

「しかしここは…」

レオンが頭を周りのガラスや鏡をコンコンっと叩く。

「多分、ミラーメイズだと思う」

唯の言葉に首をかしげるレオン。

「ミラーメイズ?」

「うん。思い出した。家から少し車で行ったところに、昔、遊園地があったの。そこに巨大迷路と鏡の迷路があって。多分ここ、その遊園地の鏡の迷路の中だと思う」

「なるほどね」

レオンはまた、コンっと鏡を叩いた。
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