Symphony V
「はい、到着」

車を会場近くのコンビニで止めた。

「ありがとう」

唯はそういうと、つけていたシートベルトをはずす。

「気をつけて行ってらっしゃい。また終わったら電話しておいで。迎えにいってあげるから」

「うん、お願い。ありがとう」

ドアを開けて外に出る。ムワっとした熱気が、唯を襲う。

「お母さんも行ってらっしゃい」

ドアを閉めて唯が手をふると、母もにっこり笑って手をふりながら、車を出した。

「時間は…」

携帯で時間を確認する。時刻は18時ちょうどだった。

「あ、ちょうど開場したくらいかな」

携帯をバッグに戻して、唯は少し早足で会場へとむかった。

大きな荷物を持った人達が、市民会館の入り口でごったがえしていた。

「すっご…」

あまりの光景に、唯は少し後退りする。
年に1度、地元では少し大きなお祭りがあるり、町中の人が集まるときがある。
まさに、その状態に近い。


こ…この中を入ってかないとダメなの?


少しばかりひきつった表情になる唯。深呼吸をひとつ。よし、と自分に気合いを入れると、唯は人混みの中を必死でかきわけながら、なんとか中へと入っていった。
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