Symphony V
「とにかく。まずはここを出よう」

レオンは唯の手を引っ張って歩き出す。

「うそ……なんで?」

一人でいたときはなかなか抜け出せなかった鏡の迷路を、いともあっさりとレオンは脱出してしまった。

「どんなトリック使ったの!?」

納得がいかない!とレオンの抗議する。

「まぁまぁ、今度迷路で迷子にならない方法を教えてやるから」

ははっと笑うレオン。唯はぷうっと頬を膨らませた。

「それにしても、ここは何なんだ?」

レオンが周りを見て言う。

出てきたミラーメイズは、かけられていた色あせた看板が少し傾いていた。周りにある遊園地の乗り物たちも、もう何年も動かされていないことを物語っていた。

「ここ…もう閉園されてから何年もたってるんだよね」

月明かりに照らし出された荒れ果てた遊園地。

「昔はそれなりに人も入ってたんだけど、今じゃすっかりこの通り。日本廃墟100選に入ってたなんて話も聞いたっけ」

誰も訪れることのない遊園地で、ひっそりと、再び動くことを夢見て佇むジェットコースターやメリーゴーランド。
寂れたその姿が、少し切なく感じた。
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