Symphony V
それでも俺たちの意思とは関係なく、世間は新しいヒーローとしてみていた。

次はいつなのか。
それを人々は楽しみにしていた。


一度感じた恐怖と不安は、簡単には消せない。

だけど、どこまで俺たちにできるのか。

どこまでやれば、彼を追い抜くことができるのか。


周りの希望と、自分自身の好奇心が、いつしか恐怖と不安を上回った。

今度は俺から、稜夜に誘いをかけた。
また、やらないかって。

稜夜は少し考えて、最初は止めたけど、協力してくれることになった。


俺たちに美術品の売買なんて当然無理だった。
だから、自分たちの手元で十分鑑賞をした後、盗んだものは必ず返した。

最初は、それに対して、世間の批判的な声もあったけど。
それが俺たちのスタイルとして定着していくのに時間はかからなかった。

それから何度か仕事をして、ちょうど1年が経ったときだった。
彼が、殺人を犯したと、ニュースが流れた。

最初は驚いた。とっても。
彼は絶対に、そういった犯罪には手を染めないと信じていたから。

それ以降。
彼は怪盗から、殺し屋としての悪名が広がっていった。

自分たちが、彼の仕事を奪ったために、彼はそんなことに手を染めたのではないか。
何度も何度もそう思った。
稜夜も苦しんだ。

だけど、ここで俺たちは逃げるわけにはいかなかったんだ。
彼を殺人鬼にしてしまった責任があるから。



だから俺たちは。

【オルトス】の名前を。


一生背負い続けることにしたんだ。
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