Symphony V
「おい、東峰。ちょっとこい」

村儀に呼ばれて、唯は首をかしげながら側に駆け寄った。

「なんですか?」

聞くと、佐藤が手にしていた手帳を渡してきた。

「この中で、誰か気になる…というか、会った覚えのある人、いない?」

聞かれて唯は首を傾げた。

手帳に書かれた人の名前はそんなに多くはなかったが、1人の人物のところで止まった。

「葵…?」

男性で、名前は葵豊。

「あぁ…葵製薬の社長ね」

その言葉に、唯はばっと顔をあげた。

「葵製薬って言いました!?」

唯の迫力に押されて、佐藤は少し驚いたように頷いた。

「そうだけど…知ってるの?」

聞かれてもう一度、唯は呟いた。

「葵豊。葵…まゆ…」


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