Symphony V
少し広くて大きな家。
そこに辛そうな顔をして、寄り添う男の人と女の人。
無表情の男の人。
にっこりと微笑む少女とむすっとした顔の少女が1人ずつ。


それじゃ、まゆを連れて行けばいいんだな?


無表情の男が聞くと、女の人は泣き出した。


…ママはどうせ、ゆいじゃなくてよかったって思ってるくせに。まゆのことみんなみんな嫌いなんでしょ。

みんな、ゆいのほうが好きなんだ。…みんな嫌い。大嫌い。


少女がつぶやいたとき、男の人は目を大きく見開いた。


まゆ!なんてことを言うんだ。お父さんもお母さんも、まゆもゆいも。

じゃぁどうしてまゆだけ連れて行かれるの!?


少女がヒステリックに叫ぶ。
父親は口ごもった。


ねぇおじさん。ゆいが行くよ。



無表情な顔をした男の人の、服のすそを引っ張って言う。



ゆい!何を言っているの!?

ゆい、まゆちゃんが好きだから。まゆちゃんが悲しむの、いやだもん。


笑って言った。



そうよ!あんたがいけばいいのよ!

まゆ!あなたって子は…!


女の人が叫ぶ。


どうするんだ?


男が言うと、笑って言った。



ゆいがいく。
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