Symphony V
Allegro -最終楽章-
ハ長調 4/4拍子
「あの、葵夫妻とお話することってできないですか?」
唯が言うと、村儀は少し難しそうな顔をした。
「できなくはないと思うが…が、すんなり応じてもらえるとは思えないが」
村儀の言葉に、唯は頷いた。
「わかってます。どうしても、聞きたいことがあるんです」
唯の真剣な眼差しに、村儀はふぅ、と息をつくと頷いて了承した。
「少し、待っていろ」
そう言うと村儀は携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
村儀が電話で交渉してくれているその姿を見ながら、唯は少し、頭の中を整理していった。
私は葵夫妻の本当の娘だった。
…まゆ先輩は、実の娘じゃなかった。だけど、私の記憶の中では、姉と呼ばれているまゆがいた。
小さいころの、朧げな記憶。
それによれば、両親は私を手放すことを嫌がっていた。
けど、私はまゆの代わりに自らどこかへ行くことを望んだ。
…どこへ行ったんだろう。
もしかして、お父さんとお母さんの元に引き取られたのって、このタイミングだったのかな。
迎えにはたぶん、男の人が来ていて、だけどその人はお父さんじゃなかった。
それなら一体、あの男の人は何者なの?
その人に一体、どこに連れて行かれたの?
「東峰」
村儀に呼ばれて顔を上げる。
「すぐに出られるか?」
聞かれて頷く。
「30分だけ何とか時間を取れた。すぐに向かうぞ」
言われて唯は力強く頷いた。
点を結ぶ糸口。
何かをつかみかけている。
そんな気がした。
唯が言うと、村儀は少し難しそうな顔をした。
「できなくはないと思うが…が、すんなり応じてもらえるとは思えないが」
村儀の言葉に、唯は頷いた。
「わかってます。どうしても、聞きたいことがあるんです」
唯の真剣な眼差しに、村儀はふぅ、と息をつくと頷いて了承した。
「少し、待っていろ」
そう言うと村儀は携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
村儀が電話で交渉してくれているその姿を見ながら、唯は少し、頭の中を整理していった。
私は葵夫妻の本当の娘だった。
…まゆ先輩は、実の娘じゃなかった。だけど、私の記憶の中では、姉と呼ばれているまゆがいた。
小さいころの、朧げな記憶。
それによれば、両親は私を手放すことを嫌がっていた。
けど、私はまゆの代わりに自らどこかへ行くことを望んだ。
…どこへ行ったんだろう。
もしかして、お父さんとお母さんの元に引き取られたのって、このタイミングだったのかな。
迎えにはたぶん、男の人が来ていて、だけどその人はお父さんじゃなかった。
それなら一体、あの男の人は何者なの?
その人に一体、どこに連れて行かれたの?
「東峰」
村儀に呼ばれて顔を上げる。
「すぐに出られるか?」
聞かれて頷く。
「30分だけ何とか時間を取れた。すぐに向かうぞ」
言われて唯は力強く頷いた。
点を結ぶ糸口。
何かをつかみかけている。
そんな気がした。