Symphony V
「…そんな馬鹿な!」

村儀がだんっ! と机を叩いた。コップがカタカタっと揺れ、中に入っていた水が少しこぼれた。

「あんたたちの戸籍に、こいつの名前は載っていない!娘のまゆにも、養女の記載もなかった!」

雅子は俯き、ごめんなさい、と何度も呟いた。

「全て、高遠にお願いをしました」

雅子の言葉に、村儀は眉をひそめる。

「せめてもの、償いのつもりだったんです」

雅子はポロポロと涙をこぼした。
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