Symphony V
稜夜と共に、市民会館の近くにあるファミレスへと向かった。
が、残念ながら、いつもはあまりいないはずのファミレスも、今日のこの日ばかりは人であふれかえっていた。

「わぁ…これじゃぁ無理ですね」

苦笑いを浮かべると、稜夜も頷いた。

「時間は大丈夫?」

稜夜に聞かれて携帯をみる。時間はすでに23時になろうとしていた。

「そうですね…」

親がさすがに心配するだろうと思ったが、しかし、せっかくの稜夜と一緒にいられるチャンス。どうしようかと悩んでいると、母親から電話がかかってきた。

「あ、お母さん…すいません」

稜夜に頭を下げながら、唯は電話に出た。

「もしもし?」

『あ、もしもし?唯?ライブは終わった?』

「うん、さっき終わったよ」

時間がもう遅い。稜夜ともう少し一緒にいたいが、怒られるだろうかと言葉に詰まっていると、稜夜が代わって、とジェスチャーをしてきた。唯は首を傾げながら、持っていた携帯を稜夜に渡した。

「あ、もしもし。唯さんのお母さんですか?」

突然稜夜が話し始める。唯はぽかんとその様子を眺めていた。

「…はい。…えぇ、大丈夫です。必ず送り届けますので。…はい…はい、では」

にっこりと笑って、稜夜は唯に携帯を渡した。

「はい、お母さんには、俺から言っておいたから」

「えっ?えっ??」

わけがわからずとりあえず携帯を受け取った。

「も…もしもし?」

電話にとりあえず出てみると、上機嫌の母親がいた。

『あんたの学校の先輩、しっかりした人ね。あんまり遅くなったらだめよ?ご迷惑かけないようにね』

そう言うと、母親は電話をぶちっと切った。
わけがわからないまま、唯は携帯を持ってぼーっと稜夜の方を見た。
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