Symphony V
「ねぇ、先輩とレオンは、どんな美術品が好きだったの?」

聞かれてレオンは首を傾げた。

「そうだなぁ…特にこれといったものがあった訳じゃなかったが…あぁ、1度だけ、あいつが真剣に見入っていた絵があったな」

「へぇ…何て作品?」

唯に聞かれて、レオンは首を横にふった。

「特に有名な作品とかって訳じゃなくて。確か、あいつが留学してきたときに、近くの小さな美術館で、一般公募で入選した作品の中の1点だったかな」

ふぅん、と唯は不思議そうな顔をした。

「そんなにすごい作品だったの?」

聞かれてレオンは首を横にふる。
「いや、俺は特別何かを感じたってこともなかったが…あぁ、あれ、知り合いだったのか?そういえば、ヨウスケって稜夜、呟いてたな」

「ヨウスケ?」

「ああ。そう言ってたと思うぜ?」

稜夜の知り合い。

唯はどことなく、不思議な感覚になる。


何か大切なことを忘れてるような気がする。



唯の中に、モヤモヤとしたものが広がった。
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