Symphony V
結局、市民会館からは少し離れたところにある、別のファミレスへと移動した。駅までの道には、たくさんのライブ帰りと思しき人や、一目、キアリーをみようときている追っかけのファン達であふれかえっていたが、駅を越えてしまうと、いつもの田舎の静けさが広がった。

「なんだか、ちょっとしたお祭りみたいでしたね」

笑いながら唯が言うと、稜夜も笑いながら頷いた。

「すごかったね。あの人ごみ」

ライブから始まり、お互いにかなり打ち解けてきたのか、すっかりいつも通りに喋ることができるようになった唯。
ファミレスまでの間、会話は途切れることなく続いた。

「いらっしゃいませ」

ファミレスに入ると、いつもよりは少しばかり人は多いものの、市民会館の近くみたいに込み合っているわけではないようで、同い年くらいの子達も何人か中に見受けられた。

「先に連れが入ってて…」

稜夜がウエイトレスに言いかけたとき、奥から声が聞こえてきた。

「あ、稜夜、遅い!こっちこっち!」

金髪の少年が、稜夜に向かって手を振っていた。

「ごめん、レオン遅れて」

稜夜が苦笑しながらテーブルの側に行く。唯に、どうぞ、とすすめてくるので、唯は少し緊張した面持ちでレオンと呼ばれた少年の向かい側に座った。唯が座ったのを確認して、その隣に稜夜も座る。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

ウエイトレスがお水の入ったコップとおしぼりを、稜夜と唯の前に置きながら聞いてくる。

「とりあえずドリンクバーを3つ。レオンはもう注文したのか?」

「いや、俺は軽く食ったから、何かつまめればいい」

「そうか、それじゃ…とりあえず、ポテトとから揚げと…あ、あとこれ、シーフードサラダ。あとは…唯ちゃんは?」

てきぱきと注文をしてくれている稜夜にすっかり任せてしまっていたため、急に話を振られて慌てる唯。

「あ。大丈夫、デス」

言うと、ウエイトレスは注文の内容を繰り返し、メニューを持ってそのまま下がっていった。

「よかったの?」

稜夜に聞かれて、唯はこくこくと首を縦にふった。
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