Symphony V
稜輔の言葉に、佐藤は首を横にふる。

「違いますよ、高遠さん。この子がどうして、殺された東峰夫妻の娘だとわかったんですか?」

「は?それはテレビで…」

言いかけてはっとする。

「この子、まだ未成年です。テレビの報道で、顔が出るなんてまずあり得ないんですよ」

佐藤の言葉に唯ははっとした。

唯の存在を、稜輔は知っている。
何より、東峰夫妻に引き渡す約束を葵夫妻にさせたのは、他でもない、稜輔本人だからだ。

雅子に話しを聞いて、唯自身、稜輔が東峰夫妻の娘ということを知っているということに、なんら疑問を持っていなかった。

「で?どうして知ってるんです?この子。自分の名前すらあなたに教えてないですよね?」

稜輔の表情が、苦虫をかみつぶしたような顔になる。

「それに、東峰夫妻を殺した犯人の情報については、一切報道されてません。どうして殺したのが、紅い蜘蛛だとあなたは思ったんです?」

佐藤の言葉に、稜輔は何も答えない。
唯はギュッとこぶしを握りしめて、稜輔に言った。

「先輩を殺したのは、間違いなく紅い蜘蛛です」

「…違う。そんなはずは、ない」

「先輩の首に、ちゃんと蜘蛛の印があった…から…」


あれ?蜘蛛の印……



「それは…ありえない!」

稜輔は真っ青な顔をして叫んだ。唯ははっとする。
< 217 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop