Symphony V
カエルの鳴き声が、いつもより小さく感じた。

じっとりとした夏の暑さも、不思議と今は気にならなかった。

首筋を伝う汗を軽く拭いながら、目の前に見える小さな小さな山のてっぺんに視線をやった。

「時間ぴったりだ」

後ろから声がした。振り返ると、そこには稜夜の姿があった。

「…約束通り、来ました」

一気に喉がカラカラになった。ゴクリと唾を飲み込む。稜夜はふふっと笑うと、すっと手を差し出してきた。

「さぁ、答え合わせと行こうか」

唯が戸惑っていると、稜夜は笑って唯の手を取った。

「おいで。ここじゃ人目につくかもしれないからね」

そういって、稜夜は唯の手をひき、上に向かった。
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