Symphony V
「さぁ、聞かせてもらおうか。君がどうして命を狙われているのか。君の導き出した答えを」

にっと笑って稜夜が微笑んだ。
唯はすぅっと深呼吸をひとつする。

「私が狙われているのは、たぶん。葵夫妻の実の娘で、東峰夫妻の娘だから」

唯は気持ちを落ち着かせながら、ゆっくりと言葉を吐き出した。

「たぶん、私を狙っているのは、高遠稜輔、葵まゆ。稜輔の方は、正直理由がはっきりとはしなかったんだけど。たぶん、それはお父さんとお母さんが殺された理由と同じなんだと思う」

「…君のお母さんは死んでしまったのか」

わざとらしく言う稜夜に、唯は少し眉を顰めた。

「警察のDNA鑑定でそう結果が出たって、村儀さんに聞いた。あの時…電話とこの場所で、どうしてお母さんの声が聞こえたのかはわからなかったけど」

少し俯きながら唯が言うと、稜夜はなんだ、とがっかりしたような顔をした。

「そうか。DNA鑑定をされてしまっては仕方がないな」

稜夜の言葉に、唯は少し首を傾げた。

「どういう…」

『お願い!唯にだけは手を出さないで!』

稜夜の口から出てきた声に、唯は目を丸くした。

「お…おかぁ…さん……」

『あの子には何の罪もないだろう!』

続いて出てきたのは父親の声。
思い溢れてくる記憶たちが、唯の目から涙を押し出した。

「…お父さんとお母さんは、やっぱり死んだんだ…」

受け入れたくない事実を目の前に突きつけられ、唯はただひたすらに、涙をこらえた。
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