Symphony V
「うわぁぁぁ!」

太ももに熱く鈍い痛みが走った。唯は思わずしゃがみこむ。

「…あんたに何がわかるって言うのよ!」

振り返るとそこには、銃を手に持ったまゆの姿があった。その顔に浮かぶ表情は、暗く、熱い怒りの感情が見えた。

「…まゆ」

稜夜が冷たく名前を呼ぶ。が、まゆはお構いなしに続けた。

「あんたのせいで、私の人生はめちゃくちゃだった!自分を引き取ってくれた両親に感謝すれば、実はあんたの身代わりに引き取られたことを知り、あんたが引き取られた後は、2人はまともに私の顔を見ようともせず、いつも避けた。何をやっても何も言わず…まるで私は、いない人間のようだった…」

ぼろぼろと涙をこぼしながらまゆは叫んだ。

「稜夜だって、将来は私と結婚するはずだったのに!ずっと小さなころからあんたのことばっかり…!どんなに私が頑張っても、彼は私のこと、見向きもしてくれなかった」

銃を唯に向け、引きつった笑顔を浮かべて唯に近づいてくる。

「何もかも…すべて、あんたのせいよ」


ぱぁん――――……


また、乾いた音が辺りに響き渡った。
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