Symphony V
「どうしてそんな風にすることしかできないの?」

辛く、悲しいと思った。

「先輩のお父さんとお母さんだって、本当は」

「黙れ!」

ぱぁんとまた、音が鳴る。唯の腕から、つぅっと血がにじみ出た。

「あんたにはわからない!あんたなんかに」

「わかんないよ!」

唯は叫んだ。

「お父さんとお母さんと仲良くしようともしないで!反発して、ろくに話もしようとしなかったんでしょう?行動で怒りをぶちまけたって、伝わんないよ!ちゃんと、言葉にしなくちゃ」

「ぬくぬくと平和に過ごしてきたくせに!知った風なこと言わないでよ!」

「お父さんとお母さんは、私をちゃんと見てくれた。私もちゃんと、お父さんとお母さんと向き合って、一緒に生きてきたんだもん!それをしようとしないで文句ばっかり言うまゆ先輩の気持ちなんて、わかんない!」

唯が言うと、まゆはふっと視線をそらした。

「何が向きあって、よ。所詮、あんたんとこだってごっこだったんだから」

「なっ…!」

「でももういいの。あいつら、もう、いなくなったし?せいせいした。あいつらの財産で、私は一生遊んで暮らしてやるんだ」

まゆの言葉に、唯は目を見開いた。

「どういうこと?いなくなったって…まさか!」

「そうよ?あの女も、あの男も。この手で殺してやった」

まゆのめが、ギラリと光った。
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