Symphony V
狂ってる。


そうとしか思えなかった。
まゆの表情も、まゆの行動も、まゆの言葉も。
何もかもが異常としか思えなかった。

「まゆ」

静かに、でも通った稜夜の声。
まゆは名前を呼ばれて稜夜の方を見た。

「ね、もうこいつもいいじゃん殺っちゃおうよ」

うっとりとした表情で見つめるまゆに、稜夜は首を横にふった。


「…お前は、最大の過ちを犯した」

「え?」


まゆが首を傾げたそのときだった。


冷たい雫が、唯の顔にかかった。


「…え……」


まゆの後頭部から、真っ赤な血が噴出す。
唯の視界が、一瞬、真っ赤に染まった。


そして、糸の切れた操り人形のように。
ゆっくりと、まゆの体はその場に崩れ落ちた。
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