Symphony V
「あっ…はぁっ…はっ……」

何が起こったのか、すぐに理解することができなかった。
自分の命を狙い、自身の両親を殺害したまゆ。

だが、そのことを告白してすぐ。
今度は稜夜に殺された。

「なん…で……?」

声を絞り出すのでやっとだった。
交互に、稜夜の手に持っている銃と、その場に倒れているまゆを見た。

稜夜は何も言わず、唯の足をポケットに入れていたハンカチで縛り、止血した。


顔色ひとつ変えず、人を殺した。


そして今度は、私を助けようとしている。


稜夜の行動の矛盾に、唯の頭はパンク寸前だった。

「こいつは約束をやぶった。だから殺した」

まるで唯の考えていることを見透かしたかのように、稜夜は続けた。

「俺はこいつと約束をしていた」

「約束?」

唯が聞くと、稜夜は続けた。

「1つ、自分の犯した罪を決して人に話さない。2つ、唯とあいつが対峙するのは俺が唯と話をし終わってから。3つ、唯を殺すときは、確実に、1発でしとめること」

稜夜の言葉に、ぞくっとした。

「あいつはすべての約束を破った」

冷たくまゆの死体を見下ろす稜夜。と、そのとき、首筋にあるものを発見した。
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