Symphony V
実に簡単だったよ。母は俺からの連絡と知ると、すぐに俺に会いにきた。
殺されるとも知らずにね。

彼女を殺害し、湖に浮かべた後。俺はあの男のところに会いに行った。ちゃんと先代の顔に変えてね。

あの男はまったく気づいていなかったよ。
そして次の仕事を与えられた。

唯を東峰夫妻に引き渡すことだ。
俺は葵夫妻のところから唯を連れて、東峰夫妻のところへと連れて行った。そして、唯を引き渡した。

それで終わるはずだった。

東峰夫妻は、俺が本物の紅い蜘蛛じゃないことに気づいた。
…先代は、東峰夫妻と知り合いだった。
いや。性格には血のつながりのある人物だった。

唯のお父さんはね、先代の弟さんだったんだ。
だから、唯を引き渡しに言ったとき、俺がまったく無反応だったことに気づいた君のお父さんは、すぐに俺が偽者だとわかったそうだ。

先代が亡くなったことを告げると、夫妻はとても悲しんでいた。
少しの間、彼らと話をして、俺はあの男の所へもどった。

君を送り届けるだけのはずなのに、予想以上に時間がかかっていたことに、このときあの男は疑念を抱いていたらしい。

つまらない勘違いと思い込み。
だが、あの男は。
そんな小さな不安の種が、月日が流れるうちに大きく成長していき。
やがて、花を咲かせた。

それが、君たち親子３人を消すことだった。

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