Symphony V
本当は、別の誰かをあの夫婦に仕立てて殺してしまおうと思っていた。
けれど、あの夫婦がそれに気づいたとき、俺を汚いものでも見るかのような目で見てきた。

そんな目で見ないでくれ。お願いだから。

俺はたまらなくなって…
気づけば2人とも、この手にかけてしまっていた。

もう、後戻りはできない。
そう思ったとき、まゆから君の殺害依頼がやってきた。

君をおびき出して、自分に殺らせてほしい。
そういう依頼だった。
俺は、快く了承した。
あの人たちの忘れ形見まで、この手にかける自信がなかったからね。

その後は、君も知っている通りだ。

…あぁそれから稜夜。
あいつも、俺がこの手にかけた。

稜夜はどこで知ったのか、俺の存在を知り、探していたらしかった。
日本に戻ったとき、俺からの連絡をまるで待っていたかのように、あいつは連絡するとすぐに会いにきた。

俺にどれだけののしられ、なじられ、殴られても。
あいつは嫌な顔ひとつせず、ただひたすらに謝ってきた。

そんなあいつの姿が嫌でたまらなかった俺は。
気がつけばあいつを手にかけていた。

いつの頃からか感情がコントロールできなくなっていたらしい。

感情に任せて。
3人もの大事な人間を、この手にかけた。
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