Symphony V

dolce

「唯、おはよう。朝食が届いたから、一緒に食べよう」

誰かが呼ぶ声が聞こえた気がした。

「ほら、起きろよ」

軽く体を揺すられる。

「う…ん……?」

眠い目をこすりながら、唯はゆっくりと体を起こした。

いつもと違うやわらかいベッド。見慣れない天井。


………え?


思考回路が停止した。

明らかに自分の家とは違う場所に居て、目の前にはレオンの姿がある。いつの間に着替えたのかわからないバスローブを身にまとい、ふかふかのベッドに横になっていたらしい自分。

「おはよう、唯」

「え?あ…おはよう、ござい……マス?」

わけがわからない、といった顔をしていると、レオンはくすくすと笑いながら、クロワッサンを載せたお皿を持って、となりに座ってきた。

「よく眠れた?」

聞かれて頷く唯。
が、状況がまったく飲み込めない。


昨日は、キアリーのライブに行って、それから…


必死で昨日の自分の記憶を手繰り寄せる。

ライブのあとは、稜夜と一緒にファミレスに行き、そこでレオンと合流した。
その後、3人で会話が盛り上がり、そのまま近くのカラオケへ行った。

そこまでは覚えている。夢じゃないかと思うくらい楽しい一時だった。


…覚えているのだが。


「唯?」

「ひゃい!?」

レオンが覗き込むように唯の顔を見てくる。きれいな顔が目の前に突然現れて、思わず変な声が出た。レオンは腹を抱えて笑った。

「ほんと、唯は面白いな」
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