Symphony V
陽輔が、唯にぼそっと耳打ちをする。

「えっ…」

そのとき、ガラガラっと入り口の扉が開いた。唯は一瞬、扉に意識がいく。

「東峰、入るぞ」

ポカンとした表情の唯を見て、村儀は顔をしかめた。

「どうかしたか?」

言われてハッとする。



…いなくなっちゃった。



「おい、大丈夫か?」

「へぃっ?」

気の抜けた唯の返事に、村儀はため息をついた。

「…大丈夫そうだな」

言われて苦笑いを浮かべた。

「あの、陽輔は…」

「さっきも聞いたじゃないか。陽輔は」

レオンが言いかけたその時だった。

「たっ大変です!」

慌てた様子で、1人の警官が中に入ってきた。

「なんだ騒々しい」

ギロリと村儀が睨みつけると、警官はあわてて敬礼をする。

「はっ…その…容疑者の姿がみあたらないんです!」

「…なんだと?」

村儀の眉間に、さらに深いシワが入る。

「ベッドがもぬけの殻なんです!」

はっとした顔で佐藤が村儀を見た。

「村さん!」

「いくぞ佐藤!」

村儀が言うと、佐藤は頷いて後を追い、部屋を後にした。


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