Symphony V
「…ありえねー!」
レオンが驚いたように言う。
「あの値段で、このうまさは一体なんなんだ!?」
目を輝かせながら、唯に聞いてくる。
「いやいや、こっちではこのくらい普通だよ?」
唯が笑うと、レオンは驚いた。
「ほんとか?すごいな」
首をふりながら、またずるっとうどんをすすった。
しっかりとしたコシのあるうどんは、少量でもかなりお腹にたまる。2人とも、食べ終えた頃には満足そうな顔で、お腹をさすっていた。
「いや、本当にすごい」
終始ご満悦の表情で、レオンは何度も言った。その様子が面白くて、唯はその隣で笑っていた。
ブルブルっと携帯が震えた。慌ててかばんから携帯を取り出すと、画面には稜夜の名前が出ていた。
「あ、先輩からだ!」
慌てて唯は電話に出る。
「もしもし。稜夜先輩?」
『………』
電話の向こうでは、少しざわざわとした声が聞こえてくるだけで、応答がない。
「……?」
唯は首をかしげながらもう一度声をかけてみた。
「もしもし?稜夜せんぱーい?」
すると、少し間が空いて、男の人の声がした。
『もしもし?』
その声に、唯は眉をひそめる。
稜夜先輩の声じゃない。
「…誰?」
怪訝そうに唯が聞く。
『すいません、この携帯の持ち主のお知り合いの方ですか?』
「はい?あっ…ええ、そうですけど」
言われた意味がいまいちの見込めず、唯はレオンの方を見ながら首をかしげる。レオンも不思議そうに唯のやり取りを見つめてた。
『私、警視庁の村儀と申します。今、お時間大丈夫でしょうか?』
「へ?警察??」
電話越しの相手の自己紹介に面食らい、唯は変な声を上げる。レオンは、唯の言葉に眉をひそめた。