Symphony V
白いそれに近づくにつれ、鼓動が早くなり、音が大きくなっていった。
周りにひびいてるんじゃないかと思うくらい、心臓の音が大きく聞こえる。

「…とるぞ」

村儀がそう言って、ちょうど顔の部分らしきところにかけてあった布に手をかける。唯はごくんと喉を鳴らした。


「……っ!!」


かくんとひざがおれ、その場にへたり込む唯。呆然と床を見詰めていた。

「稜夜!」

レオンの声が部屋中にこだました。


嘘だ。
こんなの。

嘘に決まってる。


しずくが頬を伝って落ちていった。冷たいコンクリートの床に、ぽたぽたっと小さく音を立てて落ちていった。



< 47 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop