Symphony V
「大丈夫か」

ふと顔を上げると、そこには村儀の顔があった。一瞬何がどうなっているのかわからなかったが、目の前にある白いシーツを見て、唯はただ、あぁ…と、声を漏らした。

「立てるか?」

村儀に差し出された手を取り、唯はゆっくりと立ち上がった。
そして、動かなくなった稜夜の姿が、再び目に入ってきた。

「せんぱ…」

ぐっと唇を噛み締めた。肩を震わせながら、流れ落ちる涙を必死で拭い、こらえようとした。

後ろからそっと、誰かが肩を抱いてきた。振り返るとそこには、真っ赤に目を晴らしたレオンの姿があった。

「唯…」

レオンの目にも涙がたまっているのがわかった。

「うっ……うわぁぁぁぁ!」

こらえきれなくなり、思わずレオンに抱きつく。レオンは何も言わず、ただ、唯をしっかりと抱きしめた。

唯の頬に、唯のものと、レオンのもの。2種類の涙が伝っていった。

佐藤は悲痛な面持ちで2人を見ていた。その隣で、村儀は頭をかきながらふぅ、と小さくため息をついた。
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