Symphony V
今日は1学期最後の登校日。
暑くてたまらない体育館の中で、校長のながぁくてよくわからないお話を、あくびを噛み殺しながらねむらないようにと、必死で目を見開いて聞く。

ぼけっと周りを見ていると、ちょうど3年生の1人と目が合った。


うそ!目、あっちゃった!


心臓が高鳴るのを必死で堪える唯。みるみるうちに、顔が赤くなる。

憧れの先輩、3年の高遠稜夜先輩。

運命的ななにかがあったわけでもなくって、知ったのはほんとに偶然。たまたま、クラスの子が騒いでるときに見かけて、思わず一目惚れ。

…ちょっと違うな。

正しくは単なるミーハー。

こんな田舎じゃ、なかなかかっこいい男の子なんてお目にかかることができなくて、そんな中で、先輩は結構かっこいい感じ。

いってみれば、目の保養。

好きとか、付き合いたいとか、そんなんじゃない。

ただ、見て、みんなできゃいきゃい騒ぐのが楽しい。


そんな私は、もちろん、先輩と面と向かってお喋りしたい訳じゃないし、むしろ自分の存在には気づいてほしくない。

だって、恥ずかしいじゃん。


なんて思ってたのに。


バッチリ目があってしまいましたょ?


もう、気恥ずかしいやらなんやらで。

校歌なんて歌ってる場合じゃなくなってました。
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