Symphony V
あの後、レオンも同じように村儀からいくつか質問を受けることになり、ロビーで唯は1人、ボーッと辺りを眺めていた。

警察署というのは、案外面白いところで、いろんな人達が出入りしていた。

真っ赤な顔で、いかにも酔っぱらいといったふうな人から、大学生くらいのきれいなお姉さんや、少しおぼつかない足取りのおじいちゃんまで。


みんな、どんな用事があって来てるんだろ。


働かない脳が、ゆるーく回った。

「きゃっ!」

遠くで女性の悲鳴のようなものが聞こえた。
悲鳴というよりは、歓喜の声に近いだろうか。何事かと声の方を見た。


そして唯は絶句する。



きっキアリー!?



まず、なんでこんなところに彼がいるのか。まさかの再開に、唯は驚いた。


あっ…やばっ…


思わぬところで見ることができた喜び。

それと同時に。

稜夜との唯一ともいえる、楽しかった思い出が、一瞬にして唯の脳裏を駆け巡っていった。


思わず顔を伏せる唯。



こんなとこで、いきなり泣き出したら変な子じゃん!!


大好きなキアリー。

だけど今は、見ることができない。



最高の思い出が、最悪の事実と一緒に、目の前に突き付けられるから。
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