Symphony V
なんとか泣かずに、ぐっと堪えられて、唯はふぅ、と小さく息をはいた。


…あれ?


目の前に立ち止まる人影が見える。



まさか、ね。



恐る恐る顔をあげると、そこにはスラリと細身の、しかし、しっかりとした体つきのキアリーの姿があった。

「唯、大丈夫?」

「へ?」

「唯も警察署にいるって聞いて、慌ててきたんだ」

「………はい?」

キアリーの言葉の意味がわからず、頭の中が真っ白になる。



な、なんで名前知ってるの?なんで私がここにいること知ってるの?


てか、なんで私がここにいるって聞いて慌てて飛んでくるわけ!?



そこまで思って、ふっと気づく。




…唯、も!?



まさか、と、1人パニックになっていると、ちょうどレオンが入っていた取調室のドアがあいた。

「DAD!?」

レオンの声に、唯が振り向くと、驚いたような表情を、キアリーに向けていた。

そして、ここに1人。
状況がまったく飲み込めず、目を丸くしている人物がいた。



なんか…え?今、ダッドって聞こえた?



2人が英語でなにやら話しているが、英語嫌いの唯には、内容なんてさっぱりわからない。


ダッドって、あの…英語でお父さんとか、そんな意味がなかったっけ?


頭がぐらぐらした。
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