Symphony V
だけど、恥ずかしいとは思ってても、やっぱり自慢はしたいわけで。

「えへ、稜夜先輩と目があっちゃった」

終業式も終わって、教室に戻る途中、里香にソッコー話した。

「気のせいじゃない?」

ぷぅっと頬を膨らませながら言う里香に、私は拗ねるな拗ねるな、と頭を撫でた。

「なんか唯、ついてるよねー」

羨ましそうに里香が言う。唯はうーん、と少し考えたあと、うん、と頷いた。

「否定はしない」

「ずるーい!」

きゃぁきゃぁと2人でふざけながら教室に戻っていると、1人の女生徒とぶつかった。

「あっ、ごめんなさ…」

いいかけて少し顔がひきつった。里香がどうしたのかと、相手の顔を見てあっ、と小さく声を漏らした。

「ちゃんと前見て歩いてくれる?邪魔」

キッと睨み付けながらキッパリと言い放つその子は、1こ上の先輩で、葵まゆ先輩。

生徒会副会長様で、女子の間での評判はすこぶる悪い。

なにより、唯には苦い思いでのある人物だ。

「すいませんでした」

そう言って、ソソクさとその場を去ろうとしたのだが、残念ながら、まゆはそれを許してくれなかった。

「まだ来てたんだ、ガッコ。図々しい」

その言葉に、里香がピクリと反応する。

「さっさとやめてくれればいいのに」

そう言って、唯の顔を覗き込むようにみてくる。

「…何でですか?意味わかんないんですけど」

唯の言葉に、まゆの表情が険しくなる。
< 6 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop