Symphony V
「なんて、あはは、ちょっと恥ずかしいですけど。それがきっかけで、キアリーのこと、好きになったんです。だから、お父さんもキアリーのファンなんですよ」

照れ笑いを浮かべる唯に、キアリーは優しく微笑んだ。

「嬉しいね。僕の歌が君たち親子の中を取り持ったなんて」

「そんな大層な歌でもないくせにな」

横でレオンがちゃちゃを入れてくる。そんなレオンに、キアリーがぷりぷりと怒る。

「なんか、良いですね。2人とも仲がよくって」

微笑む唯に、レオンは笑った。

「そうでもないぜ?こいつには俺、結構苦労させられてるんだ」

はぁ、とため息をつき、首を左右に振ってみせる。

「失礼だな。僕は君に、苦労なんてかけていないぞ?」

キアリーの言葉に、レオンはやれやれ、といった風に答える。

「何言ってんだ。ツアーに行くたびに、世界各国の有名な美術館から来ないでくれって講義の電話を受けるんだぜ?」

レオンの言葉に、唯は首を傾げた。

「どういうこと?キアリーのライブと、関係なくない?」

聞かれてレオンが待ってましたといわんばかりの勢いで話し始める。

「それがさ。聞いてくれよ。こいつの行く先々で、絵画やらなんやらと、有名な美術品が盗難にあうんだよ」

「まさかぁ…単なる偶然じゃないの?」

唯が笑って言うと、レオンは首を横にふった。

「いいや、それが、アメリカ以外でのツアーの回数は10回なんだけど、その10回とも。ツアー最終日の公演地にある美術館で、盗難事件が発生してるんだよ」

えぇ?と唯が少し訝しそうにレオンを見る。

「あ、信じてねーだろ。実際には、盗難事件の翌々日に、それぞれの美術館に、盗まれた美術品たちは戻ってきてるから、そんなに害はないみたいなんだけどな」
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