Symphony V
見た覚えのある場所が、テレビに映っている。

「え?」

その場所は、さっきまで自分がいた場所。

『これ、稜夜先輩のことだよね!』

里香の言葉に、テレビをもう一度見る。一瞬、村儀と佐藤の姿が映る。


なにこれ。


次の瞬間、別の場所に切り替わる。ブルーシートで囲まれた公園のような場所。そこをバックに喋るレポーターの声が流れてくる。

『えー、少年は今朝、この公園をジョギングしていた近所の方に、倒れているところを発見されたそうです』

レポーターが少し歩きながら、状況の説明をする。

『遺体が発見されたとき、少年の顔は、ひどく腫れあがっていて、身元の確認も困難なほどだったそうです』

そう言うと、今度はナレーションが入った。

『亡くなったのは、県内に住む高校生、高遠稜夜君、18歳。彼はこの県の県議会議員を務めていらっしゃる、高遠稜輔議員のご子息で、現在、警察では、殺害の動機について、究明を急いでいるとのこと』

唯は目を大きく見開く。そして、手に持っていた携帯をごとんと床に落としてしまった。

『唯?唯!?』

携帯口から小さく里香の声が聞こえてくる。
が、何も今は考えられない。


ただその場に、小さく蹲った。
< 66 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop