Symphony V
ガチャッとドアを開ける。

「唯!」

そこには心配そうな表情を浮かべた里香の姿があった。

「里香…?」

何で里香がここに?と思ったそのとき、里香と携帯で話をしていたことを思い出した。


…あ!


はっと我に返る。電話中に、そのまま携帯を落として、里香との会話を急にやめてしまったのだ。

少し困惑した表情を浮かべる唯。


どうしよ。私、何やってんだろ。


すると里香が、泣きそうな顔で唯に抱きついてきた。

「もう!心配したんだからね!」

急に電話が落ちたような音がしたかと思うと、唯の反応が一切なくなり、何度かけなおしても誰も出なくて、かなり焦っていたようだった。

「唯、大丈夫かい?」

里香の後ろには、担任の姿があった。

「え?何で…」

不思議そうに唯が尋ねると、里香があぁ、と説明した。

「唯に電話したら急につながらなくなっちゃったから。どうしても心配だったけど、私、家の場所わからないからいけなくて。先生なら知ってるはずって思って聞いたの」

先生の方を見ると、ホッと、安堵した表情で唯の頭を撫でてきた。

「里香に聞いたときはほんとにびっくりしたぞ。まぁ、無事で何よりだ」



こんな私でも、心配してくれる人がいる…



「りかぁ!あぁぁぁぁ…」

思わず里香にすがりつくようにして泣き出した。

「ど、どうしたの?」

心配そうに背中をさすってくれる里香。その優しさに、唯は涙が止まらなかった。
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