Symphony V
暫らくすると、パトカーのサイレンのようなものが聞こえてきた。ふと顔を上げると、見覚えのある顔が走ってくるのが見えた。

「唯!」

「レオン…」

ホッと安心する。里香がそばに居てくれたときとは違う安心感があった。

「大丈夫か?怪我はないか?」

はぁはぁと息を切らせて聞いてくるレオンに、唯は安堵の表情を浮かべて頷いた。

「うん、大丈夫」

「…ご両親はまだ帰ってきてないのか?」

両親の車は庭になく、家の明かりもついていないのに気づいたレオンが、唯に聞いた。

「あ、うん。今日は遅いのかな。まだ帰ってきてない」

そういえば、いつもならとっくに帰ってきていてもおかしくはない時間だ。
時計を見ると、すでに19時を回っている。

「そうか…ご両親が帰ってくるまで、一緒にいようか?」

心配そうな表情で、レオンが聞いてくる。唯はそんな、と首を横にふった。

「ううん、大丈夫、そんな、悪いし」

本当は一緒に居て欲しかった。
今まで、休みの日とか、両親が帰ってくるまで一人で居ることは、そう、珍しいことではなくて、どちらかといえば、しょっちゅうの出来事で。


いつもは平気だったのに。


なぜか今日は一人が怖くて、寂しくて。誰かそばに居て欲しい。

少し、そう思っていた。

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