Symphony V
「すみません、こちらの家の方ですか?」

レオンの後ろから、警察官らしき人物が唯に声をかけてきた。

「あ、はい。そうです」

「部屋が荒らされていた、と、こちらの方から伺ったのですが」

言われてレオンの方を見た。レオンは頷く。

「調べてもらうにこしたことはないだろ?」

どうやら、レオンが連れてきてくれていたらしい。言われて唯は頷いた。

「はい。実は私の部屋が荒らされてて」

そう言うと、警察官はカリカリと持っていた手帳にメモを取る。

「とりあえず、まず少し部屋を見せていただいてもよろしいですか?」

言われて唯は頷いた。

「あ、はい。どうぞ。こちらです」

唯は家の中へと案内した。

廊下を通って階段を上り、自分の部屋へ案内した。

「ここです」

扉を開けて、中に入って電気をつける。荒れ果てた唯の部屋が、光にさらされる。

「おぉ…これはまた…」

警察官は頭をぽりぽりとかきながら部屋の中を見回した。

「かなり派手にやられてますね」

「はい…」

ため息をつきながら答える唯。

「他の部屋は?」

聞かれて唯は首を横にふった。

「いえ。両親の部屋は全然変わった様子もなくって。私の部屋だけ、こんな風になってたんです」

確かに変だ。唯の部屋には、漫画やゲームといったものが多くあり、いかにも子供の部屋、といった感じの部屋だ。
比べて両親の部屋には、鏡台があって、必要最低限のものしか置かれておらず、何より少し大きめのサイズのベッドが置かれている。

明らかに、両親が住んでいる部屋といえば、そっちだと、誰もが思うだろう。

なのに、荒らされていたのはなぜか唯の部屋だった。

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