Symphony V
ふと、自分の手を見ると、手には真っ赤な液体がべっとりと付いていた。さらに目を丸くする。

「これ…って…」


まさか、血?


直感的にそう思った。


いやいや、ありえんし。



小さく首をふったとき、視界に何かが入った。


見てはだめ。


本能がそう唯に告げる。


…なんで?



そっと手を避ける。

「どうした?唯?」

何事かと、レオンが顔を覗かせてきた。
唯の回りを見て一気に顔が青ざめる。

床にころがっていたそれを、レオンが認識したその瞬間だった。

「見るな!唯!」

「え?」


レオンの言葉に、視線に。まるで誘導されるかのように、唯も床に視線を落とした。

そして、次の瞬間。



唯の悲鳴が辺りにこだました。


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