Symphony V
「唯!」

そう願ったとき、傍で名前を呼ばれた。
聞き覚えのある声。
嬉しい気持ちと、苦しい気持ちが交差する。

体を起こして横を見ると、声の主の姿があった。

「レオン…」

力なく相手の名前を呼ぶ。レオンはじっと、唯の方を見つめ、そばに跪く。

「どうしたの?」

そう尋ねる唯に、レオンは何も言わず、首を静かに横にふった。

ふっと、外が赤く光っているのが見えた。何が起こっているんだろうかと唯は立ち上がった。

「…………」

さっきまではまったく気づいていなかったが、家の中は警官や鑑識らしき人物で溢れ返っていた。


あぁ……


外へとつながっている窓から、そっと、様子を覗いてみる。庭にはたくさんのパトカーがぎゅうぎゅうづめになっていて、パトランプがくるくると回っていた。


…あぁ……



夢だと思いたかった記憶達が、次々と蘇ってくる。

不思議と涙は出なかった。


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