Symphony V
「こいつがお前の母親のバッグに入っていた。差出人は不明。消印も無し。多分、直接紅い蜘蛛が郵便受けかどこかに入れたんだろう」

開封済みの封筒を、唯は手に取ると、中に入っていた1枚の紙を取り出した。中には大きな蜘蛛が2匹と、小さな蜘蛛が1匹描かれている。

「これ…もしかして」

さっきの村儀の言葉を思い出す。


が、この蜘蛛の数に、唯は妙に違和感を覚えた。

「蜘蛛…3匹書かれてる」

唯が呟くと、村儀はさらに頭をがしがしっと書き、唯をじっとみた。


「考えられるのは2つ」


村儀の言葉に、一瞬、あたりがしんっと静まり返った。

「まず、標的はお前の両親だけではなく、お前も含めた3人だった」

3人はじっと、村儀を見つめている。

「もうひとつ。紅い蜘蛛の正体がお前で、この紙に書かれた蜘蛛の数は、自分に疑いがかからないようにするためのフェイク」

「なっ!?」

黙って聞いていたレオンが思わず声を上げる。

「そんなわけないだろ!」
レオンの言葉に、村儀は異議を唱える。

「なぜ、そんなわけないと言い切れる」

唯自身も、まさか紅い蜘蛛だと疑われるとは思っていなかったが、それでも、自分が犯人の1人として疑われる覚悟はあった。

「第一発見者を疑うのは刑事の鉄則って、テレビで言ってた。だから、私が疑われるのは仕方がないよ」

唯がレオンをなだめるように言うと、佐藤が少し苦笑いを浮かべてフォローした。
< 95 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop