Symphony V
「東峰さん。それは、ドラマの中の話よ」

佐藤の言葉に唯はそうなの?と首を傾げた。

「もっとも。確かにつながりのある第一発見者は、疑われやすいっていうのも事実だけどね」

少し村儀を睨みつけながら、佐藤が言った。

「もういいか?で、続きだ」

面倒くさそうに村儀が言うと、レオンをじっと見据えて、また、問いただす。

「なぜこいつが犯人じゃないと言い切れる」

気に留める様子もなく、村儀はレオンに問いかける。

「殺されたのは唯の両親だ。実の娘である唯が、そんなことをするはずが」

「それは残念だな。こいつは殺された2人の本当の子供ではない」

「えっ…?」

村儀の言葉に、レオンは一瞬言葉が出なかった。唯の方を見ると、少しだけ俯いた唯の姿があった。

「この夫妻は、幼い自分達の子供を殺されてしまったんだ。数年後、夫妻は施設から1人の少女をひきとった」

「もしかして…それが……?」

唯の方をみると、唯は少し泣きそうな顔をしていた。

「…っ、だとしても!唯とご両親はすごく仲がよかったんだ!」

「君は、この子と両親のことをどこまで知っていると言うんだ?」

言われて言葉がまたつまった。

「まぁ、血のつながりなんざあろうがなかろうが関係ない。最近じゃあ親を殺す子供も少なくねぇからな」

「ちょっと村さん!」

佐藤が村儀の言葉遮った。村儀は佐藤の表情をみて、小さくちっと舌打ちした。少しの沈黙のあと、口を開いたのは意外にもレオンだった。
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