真夏の太陽
ドクン。
心臓の鼓動がきこえた。
無事七回の裏を無失点に抑えた十座の,心臓が鳴った。
何故かはわからない。
でも,嫌な鼓動ではない。
むしろ,心地よい。
ベンチに戻る前に,ふと,スタンドに目をやった。
そこには,羽陽学院の生徒に紛れて,しかしはっきりとわかるところに,和良がいた。
応援に来ているにもかかわらず,メガホンも持たず,羽陽学院野球部の帽子だけを被って。
そして,何故か祈るように。
両方の手を絡め,胸のあたりで握りしめている。
その姿が,とてつもなく愛おしかった。
こんな感情を,誰かに抱いたのは,初めてだった。
「和良…」
無意識に呟いていた。
誰にも聞こえないであろう,本当に,小さな声で。