真夏の太陽
「大丈夫です。俺は,何回でもマウンドに立ちます」
「…そうか。だがな,この試合は九回で終わらせる。いいな。この回,必ず点を取ってこい」
「「はい!!」」
監督の言葉は,選手一人ひとりの胸に響いた。
ここにいる選手全員,延長を闘う気など微塵もない。
絶対に,九回で終わらせる。
絶対に。
「天寺」
十座は静かな声で相棒を呼ぶ。
「なに」
天寺も静かに振り返る。
「スタンド,見てみ」
「なに?」
「いいから」
十座に言われたとおり,スタンドに目をやる。
そこには,両手を握りしめて,祈るような体勢の和良と,前主将の聖名の姿。
ついでに,哀吏の姿もあった。