真夏の太陽
「十座」
「あぁ」
言葉などなくとも,ふたりの心は通い合っている。
互いに,なにを言いたいのか,確実に理解している。
「天寺。ネクスト」
「うん。行ってくる」
「あぁ」
そう言葉を交わし,天寺はネクストサークルに方膝をついて,打席を見つめた。
バッターが打ったボールは,セカンドの定位置に転がり,セカンドを守る野手のグローブに収まり,素早くファーストに送球された。
バッターはアウト。次打者の天寺が打席に入る。
無駄のない,きれいな構えだ。
真剣な眼差しでピッチャーを見据え,一球に集中する。