真夏の太陽
「不安になったんだ」
和良は首を傾げながら,170cmはあるであろう天寺を見上げた。
自分より10cmも大きい彼を。
「十座は,自分をどう思ってるのかとか。これから十座は,どんどん力をつけていって,今よりも,ずっとボールのスピードやキレが増すと思う。そうなったら,俺は十座の成長についていけるのかとか」
何も言わず,黙っている彼女を見下ろし,口を開こうとした。
「あいつはすげぇ。って,十座が言ってた」
「え…」
「だからぁ!不安になるなって言ってんの」
「…うん。ありがとう」
和良の言葉で,心を縛り付けていた何かが解け,べつの,何か暖かいものが,心の隙間に染みてきた。
今まで悩んでいた自分が,ばからしく思えてくる。
「行こ!」
弾けるような和良の声に,天寺も頷いた。